上海神戸館だより(2002年5月12日)


★給料
中国人のある友人が、日本企業から通訳を依頼された。商談のための通訳なので1日
1000元(約16000円)で2日間合計2000元、他に交通費・食事付。悪くない話だ。友人
は了解した。その話のついでに工場ができた暁には給料1ヶ月5万円であなたを雇用し
たいが都合はどうか、という話があったそうである。今の人民元に直すと3,300元。
友人は即座に断り、後で私にいった。「日本の会社はどういうつもりかさっぱりわか
らない」と。
上海市では、大学を卒業して日本語がわかる程度なら3,000元の給料は普通クラスで
ある。日系のあるコンサル会社が給料額をアンケート方式で調査した結果がある。
1600人を対象にしたデータ-であった。そこには、職種によってばらつきはあるがや
はり3,300元という数字は専門職として決して魅力的な給料額ではないことが一目瞭
然で示されていた。一般的に言うと、工場で働く工人は安いが管理職・専門職はとて
も給料が高い。さらに、欧米系企業は平均値が全体として、日系企業より500元〜
1,000元ほど高い。2つの事例を挙げてみよう。一人は、昨年の神戸大学卒業生(女
性)。日本語力を生かして上海で日系企業に就職しようとしたがなかなかいいところ
が見つからない。仕方なく、英語力を生かしてドイツのシーメンスを受けて合格し
た。いきなりの管理職で給料は20数万円(日本円換算)。同時に日本企業からも誘い
があったがこちらの提示額は10数万円。迷うことなくドイツ企業に就職し忙しい毎日
を送っている。もう一人は、神戸商大卒業生(男性)。経営関係の専門性を買われて
年俸50万元(約800万円)。こちらは、外国企業ではなくれっきとした中国企業それ
も西部開発対象地域の民営企業。数千人の従業員を抱えて、近代的な経営手法を導入
したい意図はよくわかるがそれにしても気前が良すぎる。相場というより、給料が決
まるのは会社にどれだけ見返りを求められるか、といったことが報酬基準かなと思わ
れる。いい悪いでなく現在の中国人はこのような環境のもとで職を求めているのだ。
話はもどって、友人が言う。「1万元でも私は引き受けることが出来ません。不便な
地方に住まわせられ、他の仕事も出来なくなるんですよ。2万元なら行きますが
ね。」
これからも、日本企業は中国業務を展開する必要に迫られている。さあ、どうする日
本企業よ。
 [個人的な経験・感覚で記しています。誤報があればご容赦ください。]

                                      
         鳥本敏明