帰国報告 モスクワを去るにあたって

                 川西重忠  桜美林大学北東アジア総合研究所長

モスクワは空の色も青澄み、寒さはまだ冷下温度の気候が続くものの、日ごとに日の出が早まり、陽気が徐々に立ちのぼる春の気配を感じさせています。

私のモスクワでの在外研究期間も、10月中旬に赴任して以来、半年となります。半年間のモスクワでの生活を以下に箇条書きに簡単に記して、帰国報告に代えさせていただきます。

1.            モスクワにおける研究テーマとその経緯;

「欧州、ロシアから見た北東アジアの政治経済動向」「ロシアにおける日系企業の直接投資の動向」、「日露関係の現状と展望」が当初の研究テーマであった。1昨年8月に大阪能率協会の一行と初めてウラジオストック地域を訪問し、極東ロシア地域への関心と研究が極めて希薄であったのを痛感し、1年間のロシア及び周辺地域の現地研究を思いいたった。幸いにもこの希望を大学が応諾してくれたのは有難かった。

 受け入れ機関については、最初は、ウラジオストック市の極東大学を予定していたのであるが、先方の政治・人事上の都合で、ビザ取得が難しいことが分かり、急ぎ以前教えていた「ベルリン自由大学東アジア研究所」に上期の半年間を客員教授の資格で受け入れて戴いた。この時は福沢啓臣先生とベルヒンガ―先生にご協力願った。

ベルリンでは、現在、関西学院大学の副学長に御就任が決まっている紳余元ドイツ大使とトヨタの長谷川余一社長に公私にわたりお世話になった。

後半の半年間(201110月―20123月)のモスクワでの研究生活は、コンスタン・サルキソフ先生(山梨学院大学名誉教授)に受け入れから部屋の手配までお世話して戴いた。サルキソフ先生とは大学での「司馬遼太郎と日露戦争」プロジェクトでご一緒の縁で、今も北東アジア総合研究所の客員研究員をしていただいている。

モスクワで最初に歓迎の会食会を持って下さったのは大使館の井出敬二公使であった。

ソニーの日比賢一郎社長にはモスクワ滞在中の最初から最後まで大変お世話になった。

2.            モスクワでの生活と活動について、

モスクワは、ロシアの中でも政治、経済、歴史上でも別格の街である。モスクワとサンクトぺテルブルグの2大都市はロシアの人口の約1割を占めるが、国内経済力では約5割を占め、海外企業の進出度、直接投資では3分の2を超えている。

その中でもモスクワは突出している。内外企業の動きもモスクワでほぼわかる。

私は研究面はモスクワで十分との考えから、他の土地へ行くことと観光は極力控えた。

それでもこの半年間で訪問した地域は、以下の数か所に及んだ。

1)ノボシビルスク大学  2月中旬(34日) 特別講義と研究交流打ち合わせ

2)ベルリン訪問     3月初旬(45日) 各種シンポジウム参加

3)ウクライナ訪問    3月中旬(34日) キエフ、ヤルタ、チェルノブイリ

4)サンクトペテルブルグ訪問 3月下旬(23日) エルミタージュ、要塞他

  5)モスクワ近郊(日帰り)、ヤースナヤ・ポリヤーナ、セルゲイ・パサート

3.            モスクワでの企業及メデイアなどのヒアリング等で下記の方にお世話になった

1)ソニー      日比社長

2)パナソニック   鈴木社長

3)川崎重工     土井所長

4)資生堂      五島所長

5)日本航空     替山支店長

6)CBC       山内所長

7)横浜ゴム     鈴木所長

8)トヨタバンク   山田社長

9)ジェトロ     服部所長

10)丸 紅      生田総支配人

11HIS       大室所長

12Japan tool service 岩本社長 (三井物産元所長)

13)毎日新聞     田中支局長

14)日本経済新聞   石川支局長

  15)「一番星」   岸本マスター

  16)日本航空   替山支店長

  17)日本大使館  井出公使

4.            その他、ロシアの大学研究機関との提携案、及び講義、「モスクワゼミ」、「ロシア語」

1)極東研究所  日本研究所と北東アジア総合研究所との研究連携を企画推進中

2)モスクワ国際大学(ムギモ)  東洋学科と北東アジア総究との研究連携を企画

3)ノボシビルスク大学及ノボシビルスク北海道文化センター  研究交流連携企画

4)ロシアでの大学講義

@ モスクワ大学  321日(水) 「失われた20年 日本的経営の行くへ」

A ノボシビルスク大学  220日(月) 「日本の歴史、地理、文化、経済」

  5)「モスクワゼミ」  20121月―3月、北東アジア総研主宰の形で5回開催。

  6)モスクワ大学国際語学校(ツモ)でのロシア語速習  11月―3

    約半年間のロシア語速習の疑似留学体験はロシアを知る上で貴重な体験となった

5.            国際会議及び日露研究者との討議交流

1)11月―12月にかけて合計3回の日露国際会議に参加、

2)コンスタンチン・サルキソフ先生   日露関係、北方領土問題について討議

3)富田 武先生  日本兵抑留者問題について研究討議

このような纏まとまった1年間の研究時間を与えてくれた桜美林大学に感謝申し上げたい。

そしてモスクワ滞在中にお世話になった多くの日ロ関係の友人知己に感謝の意を表したい。

以上、本文を以て、日ロの多くの関係各位の皆さまへの帰国報告とさせていただきます。