上海神戸館だより(2002年6月4日)

順不同となりますが、逆見本市関連の神戸館特別講座概要をお知らせします。
                                    
開催日:2002年5月31日
場所:上海神戸館
講師:関満博教授(一橋大学大学院)
テーマ:「中国企業と国内産業」
参加者:35人

(関満博教授の講演要旨:)
今最も注目されているのは東莞市(広東省)。面積は神奈川県と同程度。市域に40

あるがその中のひとつ長安鎮を紹介したい。
2001年3月現在戸籍人口3万人。外来人口65万人。道を歩いて人が多いので同行者に
「お祭りですか」と尋ねると「これは毎日です」という答えが返ってきた。ここは
世 界最大の生産地。パソコンマウスの世界生産の90%、キーボード70%、パソコン本
体 50%を主として台湾系企業が生産している。この地に台湾は、4000工場を持ってい
るが日本は65工場。しかし、私は日系だけで300工場知っているので実態は工場がい
くつあるのかわからない。
看板もない一つのビルがあり、1階には亜州光学というレンズ生産では世界最大の
台 湾企業が入居しており、3000人が働いている。2階にはリコー、3階はニコン、4階
コダック、5階オリンパス。日本のカメラメーカーが全部入居している。2階から5階
まで亜州光学がまとめて面倒を見ており、現実は日本でどのカメラを買っても生産地
では同一工場で作っているのが実態だ。
 またこの地では、京セラが7工場を一気に立ち上げ京セラ工業園をつくっている
し、 電子部品とセットメーカーなども全部が進出してきている。
これらを支えているのが地方から働きに来る女工さんたち。ポリバケツに家財道具
を 詰め2,000qかなたからやってくる。ある日工場に行くと、そんな人達が1000人ほ
ど門の前に集まっている。何事かと聞くと、どうやらその工場で従業員募集のうわさ
が立ったらしい。うわさだけでこれだけ集まるとはなんとも驚きだ。地方の男は彼女
がポリバケツを買ったら要注意。彼女をあきらめるか追いかけていって男に職はない
こ の地で生活するかの選択を迫られる。
経営・管理面については一つの特徴がある。台湾系企業が日本人を工場長に迎えて
い るケースである。日本人は裏切らないので便利なのである。典型的なケースとし
て、 オーナーは台湾人、法人が香港にあり、委託工場は東莞、管理は日本人というのが
ある。 
中国に力を入れている韓国企業と日本企業との違い。日本企業は社長が中国に行か
な いため意思決定ができない。韓国企業は社長が家族を連れて工場の3階に住み子供
は現地の大学へ行き現地化していく。その差はおのずと明らか。また、欧米は最新技
術で勝負するが日本は2・3世代前の技術を中国に持ち込むためエアコン(瀋陽三
*)もバイク(天津ホ**)も売れない。
日本製品のコスト高の原因。アメリカ企業は3ヶ月で帰国、あとはローカルに任せ
る。台湾・韓国は現地の農家にでも下宿できる。日本人は高級マンションに住み、
1500万円〜2000万円のコストがかかる。これが競争力のない原因。
 最後に、2つの理論を紹介。
ライター理論:いまでは100円の使い捨てライターか5万円の超デラックスを使用。
中 国も同じように中間は要らない。中国市場をねらうなら最高級をやるべき。
自転車理論:長期滞在時には自転車を購入する。ところがすぐに壊れ修理屋さんに
持っていくことになる。しばらく乗っているとまた、別のところが壊れて修理屋さ
ん に行く。これを幾度か繰り返し、直し直ししていくうちに完成品になっていく。品
物 や社会制度も同じ構図になっている。

(参加者の感想)
先日は大変為になる講演会にお招きいただきありがとうございました。
留学生上がりで経験不足の私にとって、とても身になる話を聞くことができまし
た。
内容もわかりやすく、ユーモアを混ぜてお話をしていただいたお陰で、
飽きることも全く無く、有意義な時間が過ごせました。
次回また関先生の講演会がございましたら、是非参加させていただきたいと思いま
す。
本当にありがとうございました。
山口 将志      MASASHI YAMAGUCHI